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考えることを、考えるということ

――メタ的思考に身をゆだねる意味と、そのリスクについて――

「人間は考える葦である」と言ったのは、パスカルでした。
私たちの思考は、ときに脆く、そして限りなく深くなります。
このエッセイでは、「考えることについて考える」という、一見堂々巡りにも思える営みに、私自身がどう向き合っているのか、その意味とリスクを見つめ直してみたいと思います。

考えることは、自分自身をつくる営み

私は、これまで何度も思考に救われてきました。
そして、同じくらい、思考によって傷つき、病んだ経験もあります。

統合失調症を発症したことは、まさに「考えすぎてしまったこと」と無関係ではなかったと感じています。
それでも、私は考えることをやめませんでした。
というより、やめられなかったのです。

考えることは、私にとって「尊厳を維持する手段」であり、
「自分が自分であること」を確かめるための営みでした。
そこには、誰かに強制された責任というよりも、
内発的に湧き上がる“義務”のようなものがありました。
それは、自分を生きようとする意志のような感覚に近いものです。

メタに考えることの意味

「自分はなぜこのように考えるのだろう?」
「この思考の前提には、どんな価値観や恐れがあるのか?」
そういった問いを重ねていくことで、私は少しずつ自分の内面を見つめる目を育ててきました。

このようなメタ的な視点は、
思考の暴走や思い込みから距離をとるために役立ちます。
そして、ときに他者の視点を想像することにもつながります。

つまり、メタ的に考えることは、自己理解と他者理解の懸け橋なのです。
それは、支援の現場においても、対話の場においても、何よりも大切な力になると思います。

けれども、それは刃物のようなものでもある

しかし、そうした思考のあり方が、つねに癒しや発見をもたらすわけではありません。
メタ的に考えすぎることは、思考の迷宮に閉じ込められる危険もはらんでいます。

「自分の考えを考える」という構造は、とても強固です。
ときにそれは、考えても考えても“出口のない問い”になり、
行動を止め、心を疲弊させてしまうこともあるのです。

また、「すべては自分の考え方次第だ」と思い詰めすぎると、
あらゆる苦しみを“自分の責任”として抱え込んでしまうことがあります。
これでは、思考の本来の役割「よりよく生きるための手段」が、
逆に命を圧迫するものになってしまいます。

バシュラールに学ぶ、“断絶”としての思考

ここで私は、フランスの科学哲学者・詩人であるガストン・バシュラールの言葉を思い出します。

彼はこう述べました。

「真の思考は、連続ではなく断絶である」
――ガストン・バシュラール

バシュラールは、ただ思考を積み重ねるのではなく、
ある種の「断絶(rupture)」これまでの考え方や前提を中断することこそが、新たな理解を切り拓く鍵だと説きました。

この言葉は、私にとって救いでもあります。
「思考の連続性」にこだわりすぎると、堂々巡りに陥ってしまいます。
けれども、「あえて断ち切る」「問いを止める」「別の場所から見てみる」
そうした“断絶”の技法があることで、私たちは再び自由に考えられるようになるのだと思います。

思考と共に、感覚と対話を

だからこそ、私は思考に偏りすぎないように努めています。
「考えること」を一度手放して、感じることに身をゆだねる時間を持つ。
あるいは、他者との対話の中で、自分の思考を風通しのよいものにする。

考えることは、孤独の中でもできる営みですが、
ときにその孤独をほどくためにも、他者が必要になるのです

考えることに行き詰まったときは、
「今の私は、思考によって自分を閉じ込めていないだろうか?」と立ち止まってみる。
その問いが、また新たな出口を開いてくれるように思います。

終わりに ―「考える義務」というやさしい責任

私は、「考えること」には、放棄してはならないやさしい義務があると思っています。
それは、誰かに課されるものではなく、
自分自身の命と向き合い、尊厳を守るための行為です。

だから私は、考えることを諦めません。
たとえ、その道の先にもう一度苦しみが待っていたとしても。

けれども今は、少しだけ考え方を変えることも覚えました。
考えることを、「がんばる」ことではなく、
「自分を大切にすることのひとつ」として、やわらかく捉えています。

考えるとは、生きること。
生きるとは、問い続けること。

私は、そんなふうに生きていきたいと思っています。

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